威徳山金剛寺 密教の真髄

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「金剛頂経を読み解く」現代語訳(後編)

金剛頂一切如来大乗現証大教王経

金剛界大曼陀羅広大儀軌品之三

[金剛阿闍梨が曼陀羅に入る作法]

「それから、金剛阿闍梨は儀軌(マニュアル)に従って、三昧耶最勝女(四波羅蜜菩薩のこと)の印契を結びながら曼陀羅に入り、そしてその印を解いた後、印契女との瑜伽(性行為によって得られるエクスタシーの境地)に入りなさい。

これがこの場合の、すべての印契女との瑜伽の境地に入るための心呪である。

アク

然るべき手続きに従って教誡(教え戒め)を賜わることを求め、同様に自らにエネルギーを注入(加持)し、自らの名前を告げてから、金剛(杵)でもってこの作法を完了させなさい。次に、金剛阿闍梨は薩埵金剛印(金剛縛印)を結んで、弾指(人差し指を弾く所作)と拍掌(手を叩く所作)をしながら、すべてのブッダを集合させなさい。その刹那、金剛薩埵に伴われたすべてのブッダは、この金剛界大曼陀羅に溢れ返るほどの数が集合するだろう。そうしたら、速やかに大印を結んで、金剛薩埵を勧請(招く)するために最も価値のある百ハ名(前述)を一度だけ唱えなさい。そのことによって、ここに集合した大勢の如来たちは、みな歓喜してそこから離れなくなるだろう。また、自らが金剛薩埵となること(入我我入)によって、それらすべての如来たちは友として近くに座るだろう。次に大羯磨最勝印を結んで、四つの門にいる鉤、索、鏁、鈴の四摂の菩薩と融合しなさい。諸々の三昧耶最勝印、薩埵金剛印を結び、

ジャク ウン バン コク{ジャハ フーン バン ホーホ}

と四摂菩薩の心呪を唱えながら、それぞれの大薩埵(四摂の菩薩のこと)との冥合を完了させなさい。そうすると、すべてのブッダや菩薩、天部たちは、鉤に引っ掛けられ、索で引き寄せられ、鏁に縛られ、鈴で癒されることによって、この曼陀羅の集合体から離れることが出来ずに、金剛阿闍梨の支配下に置かれるだろう。

[弟子の入壇作法]

{金剛界大曼陀羅に入るための素質}

次に、今度は金剛弟子が金剛界大曼陀羅に入るための儀軌(マニュアル)を説く。この「入る」ということに関してだが、まず金剛弟子は、全宇宙のあらゆる生きとし生けるものを残らず救済すること、さらにあらゆる生きとし生けるものに恵みを与え安楽にするために最高の悟りを達成しようという心構えがなければならない。ただし、この金剛界大曼陀羅に入るに際して、その金剛弟子に素質があるかないかは問題にならない。

なぜなら、すべての如来たち(あなた方)よ、聞きなさい。たとえその人たちが大きな罪を犯していようとも、この金剛界大曼陀羅を観、そして入るのなら、すべての罪悪から離れたものとなるからである。

またたとえその人たちがあらゆる財産や食べ物や飲み物などに執着し、戒律を守ることを嫌い、曼陀羅に入るための前行が不出来であったとしても、この金剛界大曼陀羅に入ることになれば、欲望のままに行動しようとも、すべての願望は完全に満たされることになるからである。

またある人々は、踊りや歌やお笑いや芝居、あるいは美食などのあらゆる娯楽に耽り、さらにすべての如来たちが持つあらゆる生きとし生けるものを悟りに導くという大乗の尊い教えに目覚めていないために、他の神々を信仰してその教えの世界に入り、充分に満足してしまい、多くの人々をその信仰の道に導く活動をしているが、それらの人々にこの上ない喜びと満足を与えるすべての如来たちの曼陀羅には、その教えに従い修行をすることを恐れてなかなか入ろうとしない。

しかし、その外教に堕ちた人々こそ、この金剛界大曼陀羅に入るべきなのである。なぜならそれは必ずや彼らに、あらゆる喜びと満足を得させる最上の悟りを実現させ、彼らが歩んでいる悪い方向へ向かう道を転覆させるからである。

さらに、正しい教えに従い、戒(戒律)、定(瞑想)、慧(智慧)という修行に邁進し、四禅(初期仏教の四つの瞑想修行)や八解脱(同じく初期仏教の八段階の解脱修行)、あるいは菩薩の十地の修行(大乗仏教の悟りに至る十段階の菩薩行)などの仏道修行に奮闘努力しながらも、なかなか目指す悟りに至らずに苦しんでいる人もいる。

しかし、そんな人でも、この金剛界大曼陀羅に入るならば、そのことだけでブッダの悟りを得られ、すべての如来たちと同等のものとなれる。まして他の悟りの境地が得られない筈がない。

[四礼]

金剛阿闍梨は、まず最初に金剛弟子に四方におられる一切如来(阿閦、宝生、観自在王、不空成就)とその眷族の菩薩たちに礼拝するよう指導しなさい。金剛弟子は、まず次の真言を唱えながら、金剛合掌したその手を頭上に上げ、全身を地に付ける五体投地をし、東方・阿閦如来とその眷族の菩薩たちに礼拝しなさい。

オーム サルバタターガタプージャーウパスターナーヤ アートマーナム ニルヤータヤーミ サルバタターガタ バジェラサトヴァ アディティシュタスヴァ マーム{オーム 一切如来に供養し親近せんがために、我は我自らを捧ぐ。金剛薩埵よ、我を加持せよ}

そこから立ち上がり、金剛弟子は金剛合掌を胸の前に置いて、次の真言を唱えながら、額を地に付けて南方・宝生如来に礼拝しなさい。

オーム サルバタターガタプージャーアビシェーカーヤ アートマーナム ニルヤータヤーミ サルバタターガタ ヴァジェララトナ アビシンチャ マーム{オーム 一切如来に供養し彼らより灌頂を授けられるために、我は我自らを捧ぐ。一切如来よ、金剛宝よ、我を灌頂せよ}

そこから前と同じように立ち上がり、今度は金剛合掌を頭に載せて、次の真言を唱えながら顔を地に付けて、西方・阿弥陀如来(観自在王如来)に礼拝しなさい。

オーム サルバタターガタプージャープラヴァルターナーヤ アートマーナム ニルヤータヤーミ サルバタターガタ ヴァジェラダルマ プラヴァルタヤ マーム{オーム 一切如来に供養し法輪を回させるために、我は我自らを捧ぐ。一切如来よ、金剛法よ、我がために法輪を転ぜよ}

そこから前と同じように立ち上がり、今度は金剛合掌を頭から胸の前に戻し、次の真言を唱えながら頭上を地に付けて、北方・不空成就如来に礼拝しなさい。

オーム サルバタターガタプージャーカルマネー アートマーナム ニルヤータヤーミ サルバタターガタ ヴァジェラカルマ クル マーム{オーム 一切如来に供養し、衆生利益の働きをなさんために、我は我自らを捧ぐ。一切如来よ、金剛羯磨よ、我がためにその働きをなせ}

[覆面・執華]

次に赤い衣と上衣を着て、面を赤い布で覆われた弟子は、次のような心呪と共に薩埵金剛印(金剛縛印)を結びなさい。

サマヤス トバム *汝は三昧耶(金剛薩埵とわたしは分け隔てなく平等) なり*

それから阿闍梨は、薩埵金剛印(金剛縛印)を結んだ弟子の華鬘を結び付けて、次のような心呪と共に弟子を曼陀羅に入れなさい。

サマヤ フーム *三昧耶よ、フーム*

[誓誡・誓水]

次いで弟子を曼陀羅に入れた阿闍梨は、彼に次のように告げなさい。

「今日、あなたはすべての如来たちの仲間になった。だから私はあなたにダイヤモンドのように堅固で永遠に光り輝く智慧を思い起こさせるだろう。そしてその智慧によって、あなたはすべての如来たちの悟りの境地すらも獲得するだろう。ましてそれよりもレヴェルの低い境地ならなおさらである。しかし、あなたはまだ曼陀羅を見ていない人に、そのことを語ってはならない。もし他の人にそのことを語ったならば、せっかく得たあなたの悟りの智慧が、跡形もなく消え失せてしまうだろう」

次に阿闍梨は、自ら薩埵金剛印(金剛縛印)を結び、その印を下に向けて弟子の頭のテッペンに付け、次のように告げなさい。

「この印は、ダイヤモンドのように堅固不滅の宇宙の本質を示すものである。もしあなたが他の誰かにこのことを話したならば、この印はあなたの頭を瞬時に粉々に粉砕するだろう」次に同様にその印でもって、用意した水に智慧のエネルギーを注入し、心呪を一編唱え、エネルギーを加えられて智水となったその水を弟子に飲ませる。その心呪とは次のようなものである。

ヴァジェラサットヴァ スヴァヤム テー アドヤ フリダエー サムアヴァスティタハ ニルブヒドヤ タットクチャナム ヤーヤード ヤデェイ ブルーヤード イマム ナヤムヴァジュローダカ タハ

*金剛薩埵は今や汝の心臓に正しく確立されている。汝がもしこの悟りに至る真理を他に語るならば、それはたちどころに汝の心臓を破って出て行ってしまうだろう*

次に阿闍梨は弟子に、次にように語りなさい。

「今日より以降、私はあなたにとっては金剛手菩薩(金剛薩埵)である。あなたに私がこれをしなさい、と言ったことは必ずしなければならない。また、あなたは私を軽蔑したり侮ったりしてはならない。あなたが私に仕える労を惜しむならば、あなたは死んでから地獄に落ちるだろうが、決してそのようなことがないように」

このように言い聞かせてから、金剛阿闍梨は、弟子に次のように告げなさい。

「あなたはここでこのように宣言しなさい。すべての如来たち、私にエネルギーを注入したまえ、金剛薩埵は私に入りたまえ、と」

[加持護念・同真言]

次に金剛阿闍梨は速やかに薩埵金剛印(金剛縛印)を結びながら、次のような偈(詩)を説くべきである。

「まさにこの金剛堅固を表す形(印)こそ、金剛薩埵に他ならない。まさに今、この上ない金剛堅固の智慧を、汝にいらしめよ。

ヴァジェラアーヴァーシャ アハ *金剛入よ、アハ*

次に阿闍梨は忿怒拳を結んで、弟子が結んでいる薩埵金剛印(金剛縛印)を崩させ、そして金剛堅固な言葉によって、あらゆるものを悟りに至らせる大乗の悟りを弟子に説き明かしなさい。

すると、永遠不滅に光り輝くダイヤモンドのような智慧が弟子に入る。弟子はその智慧によって他人の心を知る。過去、現在、未来において、自分の為すべきことを知るだろう。そしてその心は、すべての如来たちの教えを信じ理解することが堅固となるだろう。またこの弟子の苦しみは消えてなくなるだろう。また彼はすべての恐れを離れたものとなり、いかなる人々の間にあっても害されることはなく、すべての如来たちは彼にエネルギーを与え守ってくれるだろう。またすべての可能性は彼の目の前に広がるだろう。

そしてこの弟子は、今までに経験したこともなかったような心からの喜びと満足をもたらす楽しさに浸る。そのこの上ない楽しさに加えて、ある弟子の中には、願うことがすべて叶うだろうし、またある弟子の中には、すべての如来たちの本質と同化し宇宙とひとつになる喜びを味わうだろう。そこで弟子は、再び薩埵金剛印(金剛縛印)を結び、自らの胸の前で、次のような心呪を唱えながら解きなさい。

「ティシュタヴァジェラ ドリドー メー ブハヴァ シャーシュヴァトー メー ブハヴァ フリダヤム メー アディティシュタ サルヴァシッディム チャ メー プラヤッチャ フーム ハ ハ ハ ハ ホーホ*金剛よ、安立せよ。我にとって堅固であれ。我にとって永遠であれ。我の心魂を加持せよ。そして我にすべての悟りを与えよ。 フーム ハ ハ ハ ハ ホーホ*」

[投華得仏]

次に弟子は、手にしていた華鬘を次のような心呪と共に大曼陀羅に投げ入れる。

「プラティイッチャ ヴァジェラ ホーホ *受けよ、金剛よ*」

そしてその華が上に落ちたところの尊が、彼の本尊となる。次いで阿闍梨は、その華鬘を取って、次のような心呪と共に、その華を弟子の頭に結び付ける。

「オーム プラティグリフナ トヴァム イマム サットヴァム マハーヴァラハ*オーム 汝はこのものを受け入れよ。汝、偉大な力を持つものは*」

その華鬘が頭に結ばれたことによって、その弟子は、その偉大なる存在者(仏尊)と同化したものとなる。そしてその弟子は、たちどころに悟りを得たものになる。

[覆面を解く真言]

次に阿闍梨は、このように曼陀羅の一尊と入我我入した弟子の覆面を、次のような心呪と共に解く。

「オーム ヴァジュラサットバハ スヴァヤム チー アドヤ チャクシュウドグハータナタットパラハ ウドグハータヤティ サルヴァークショー ヴァジュラチャクシュル アヌッタラム へー ヴァジュラ パシュヤ*オーム、金剛薩埵は今日、汝の眼を開かしむることに専念したまう。あらゆるものを見る者は、この上ない堅固不滅の眼を、汝に開かしむる。へー 金剛よ 見よ*」

[曼荼羅を見る功徳]

次に阿闍梨は、大曼荼羅を金剛鉤菩薩(最後に生成された鉤・策・鏁・鈴の四摂の菩薩)から大毘盧舎那如来までの生起のプロセスを逆に辿って見せるだろう。そして、大曼荼羅を見せるや直ちに、弟子はすべての如来たちによってエネルギーを注入(加持)され、そのことによって、金剛薩埵は彼の心臓(フリダヤ)に安住する。その時、弟子は、金剛薩埵が光り輝くエネルギー球体(光明輪)を現すなどの不思議な力を発揮するのを見るだろう。弟子はすでに、すべての如来よりエネルギーを注入されているから、時には世尊である大持金剛(偉大なる金剛薩埵)がその姿を現わすのを見るかも知れない。もちろん如来に至っては、当然、彼の前に姿を現わす。この時より、この弟子は、すべての恩恵(利益)が与えられるだろう。彼がしようとすることは、すべて彼の意に叶うものとなり、そしてすべての霊験が達成されるだろう。なおかつ、持金剛(金剛薩埵)であることも、如来であることも、思いのままに実現できるだろう。

[瓶(びょう)灌頂]

大曼荼羅を弟子に見せた阿闍梨は、そこで水瓶に入れた香水を金剛(杵)によってエネルギーを注入(加持)し、次のような心呪とともに灌頂(智水を頭上に灌ぐ儀式)するだろう。「ヴァジュラ アビシンジャ ※ヴァジュラよ、灌頂せよ※」


 [金剛主灌頂]

次に阿闍梨は、弟子が覆面をしていた時に大曼荼羅に投げた華(投華)によって選んだ特定の一尊の、その印契を弟子に結ばせ、その印に華飾りをつけ、それを手に持たせた上、このように告げるだろう。

「今日、汝は諸仏によって、めでたく金剛灌頂を授けられた。今、手にしている華は、汝の仏性そのものである。良き霊験(悉地)を得るために、この金剛をしっかり握りしめ持ち続けよ。

オーム ヴァジュラアディパティトヴァム アヴィシンチャーミ ティシュタ ヴァジュラサマヤス トヴァム※オーム 我は汝に金剛主の本質を灌頂せん。安立せよ、金剛よ。汝は三昧耶なり※」

[金剛名灌頂]

さらに阿闍梨は、次のような真言によって、弟子に金剛名灌頂を授けるだろう。「オーム ヴァジュラサトヴァ トヴァーム アヴィシンチャーミ ヴァジュラナーマアヴィシェーカタハ へーヴァジェラ (ナーマ)※オーム 金剛薩埵よ。汝を我は金剛の名によって灌頂す。金剛なにがしよ※」なお、この場合、その人に与えられるであろうところの金剛名の前に、「へー」という呼びかけの言葉を発するべきである。

[悉地を成就する智慧]

{四種悉地智}

次に阿闍梨は弟子にこう言うだろう。

「何が汝の心に叶うものなのか。仏の恩恵を受ける成就の智慧か。それとも神通力を得る成就の智慧か。それとも真言の霊力を成就する智慧か。さらにはすべて如来の最上の智慧を成就する智慧なのか」

弟子が望むそれらのどれかの智慧が、弟子に授けられるべきである。

[利益の悉地を成就される智慧]

そこで阿闍梨は、弟子にまず、最初の仏の恩恵(利益)を成就させる智慧を学ばせるだろう。

「地の奧深くに隠されている(伏蔵)、金剛杵の形を、自らの心臓(フリダヤ)の中で観想しなさい。それを観想するなら、その人は、地中にあるあらゆる隠された蔵を見ることが出来るだろう。金剛杵の形を描いて、それを空中に観想しなさい。それが落ちたところは、隠された蔵の在りかを指し示しているだろう。智慧ある人は、金剛杵の形を舌の上で観想しなさい。その舌は自ら「ここに隠された蔵がある」と語るが、それは真実である。自分自身の体を、金剛杵の形そのものであると観想しなさい。その観想が完全になったところで金剛杵は地面に落ちるだろうが、その場所が隠された蔵の在りかを指し示しているだろう」

それらの宝の蔵を知るための心呪(フリダヤ)は次のとおりである。

ヴァジュラニデイ ※金剛の隠された蔵よ※

ラトナニデイ ※宝の隠された蔵よ※

ダルマニデイ ※法の隠された蔵よ※

カルマニデイ ※活動の隠された蔵よ※」

[金剛の神通力を成就させる印契の智慧]

次に阿闍梨は弟子に、金剛の神通力を成就させる印契の智慧を学ばせるだろう。

「投華によって結ばれた一尊と入我我入を果たした人は、水が金剛杵の形であると観想するならば、すぐにも成就者として水の上を自由に歩き回ることが出来るだろう。同じように入我我入の瞑想状態の中で、自らの正しい姿を生起し、それをブッダの姿であると観ずれば、その人はブッダの姿になるだろう。同じように入我我入の瞑想状態の中で、自分を「我は虚空なり」と観ずれば、その間は人に見られない状態で歩き回ることが出来るだろう。自ら入我我入の瞑想状態の中で、「我は金剛なり」と観ずれば、その人は意識が上昇している間、虚空を行くものとなるだろう。それらの神通力を得るための心呪(フリダヤ)は次の如くである。

ヴァジュラジャラ ※金剛水よ※

ヴァジュラルーパ ※金剛色身よ※

ヴァジュラアーカシャ ※金剛虚空よ※

ヴァジュラム アハム ※我は金剛なり※」

[金剛の真言の霊力を成就させる印契の智慧]

次に阿闍梨は弟子に、金剛の真言の霊力を成就させる印契の智慧を学ばせるだろう。「月の形を描いて、それを天空に昇らせなさい。その状態で自らの手の中に金剛杵を観想するなら、その人は金剛の真言能力者となれるだろう。月の形を描いて、それを天空に昇らせて、その中に金剛宝を観想しなさい。この観想によって自らの心を清らかにしたなら、その刹那に空中に浮遊し、望む限りの時間、そこに留まることが出来るだろう。月の形を描いて天空に昇らせ、その月に登りながら、手にある金剛蓮華を「金剛眼なり」と観想すれば、その人は自らに真言能力者の位を与えることになるだろう。虚空に月を観想し、その中央に座り、手の中に羯磨金剛を観想しなさい。羯磨金剛を持つことによって、彼はたちどころにすべての霊験を発起する真言能力者となるだろう。それら真言能力者となるための心呪(フリダヤ)は次のとおりである。

ヴァジュラダラ ※持金剛者よ※

ラトナダラ ※持宝者よ※

パドマダラ ※持蓮華者よ※

カルマダラ ※持羯磨者よ※」

[すべての如来の最上の悉地を完成される印契の智慧]

次に阿闍梨は弟子に、すべての如来の最上の霊験(悉地)を完成させる印契の智慧を学ばせるだろう。

「この宇宙の中(虚空界)において、すべては光り輝き金剛不滅である(一切金剛三昧)と思念して、それによって自分が金剛の体になることが出来たなら、その人はその瞬間に空中に浮遊し、望む限りの時間、そこに留まることが出来るだろう。同様に、宇宙の中(虚空界)において、すべては清らかである(一切清浄三昧)と観想すると、その人は五つの神通力を獲得するだろう。そして彼はたちどころに、すべては清らかであるという智慧を完成させるだろう。すべての宇宙(虚空)は金剛薩埵によって形成されたものである、と堅固に念じ続ける人は、たちどころに持金剛(金剛薩埵)になることが出来るだろう。虚空界はその全体がブッダの映像であると信じて理解し、すべてはブッダである(一切仏三昧)と念じる瞑想修行をする人は、ブッダとなることが出来るだろう。それらのすべての如来の最上の悉地を得るための心呪(フリダヤ)は、次のとおりである。

ヴァジュラヴァジュラ ※金剛の中の金剛よ※

シュッダシュッダ ※清らかなるもののうちの最も清らかなるものよ※

サットヴァサットヴァ ※金剛薩埵の中の金剛薩埵よ※

ブッダブッダ ※ブッダの中のブッダよ※

[秘密法]

{誓誡・心真言}

次に、弟子が秘密を保持することが出来るのなら、その弟子に対して秘密法が伝授される。まず最初に、弟子に次のような誓いの心呪(フリダヤ)を説くべきである。

オーム ヴァジュラサットヴァハ スヴァヤム テー アドヤ フリダエー サムアヴァスティタハ ニルブヒドヤ タットクシャナム ヤーヤード ヤディ ブルーヤード イダムナヤム※オーム 金剛薩埵は自ら今や汝の心臓(フリダヤ)に住したまう。もし汝がこの理趣(悟りに至る道)を他人に漏らすなら、金剛薩埵はその刹那に汝の心臓(フリダヤ)を破って出て行ってしまうだろう※」
次いで、次のように教えるべきである。

「あなたはこの誓いの心呪(フリダヤ)を決して他人に教えてはならない。もし誓いを破るなら、あなたの身に危険が迫っても、それを回避出来ず、非業の死が待っているし、その身のまま地獄に堕ちることになるから、充分に気をつけるように」


 {秘密印契智}

次に秘密の印契の智慧を教えるべきである。

「投華によって得た一尊との入我我入の境地の中で、あなたは金剛合掌したその手を、ほとんど聞こえないほど微かに打ちなさい。そうすれば山をも意のままに従わせることが出来るだろう。金剛拍印は、金剛入の所作を応用して、金剛縛した両手を左右から押し付けるように握り、次いで微かに打ち付ける。すると山ですら押し潰すことが出来るだろう。同様に、金剛入の所作を応用して、金剛縛した両手を伸ばし、両手の中指を伸ばして打つなら、たちどころに百族の侵攻を抑止することが出来るだろう。金剛入の所作を応用して、微かに両掌で拍掌し、金剛縛を解いてすべての指をひとつに合わせるなら、それはすべての苦を破壊する最勝の印となる」

{秘密成就法}

次は秘密成就法である。

「愛欲の心でもって、女人の、あるいは男子の身に入りなさい。心で完全に入ったと観想出来たら、現実に相手の身体に等しく遍く満ちるだろう。同様に、拍掌の心呪(フリダヤ)は次の如くである。

ヴァジュラ ヴァシャ ※金剛よ、支配せよ※

ヴァジュラ ヴィシャ ※金剛よ、入れ※

ヴァジュラ ハナ ※金剛よ、殺せ※

ヴァジュラ ハラ ※金剛よ、圧し潰せ※

[大三法羯・四種印の智慧]

次に阿闍梨は弟子に心呪(フリダヤ)を授けてから、弟子自身の念持仏の四印の智慧を学ばせるべきである。次のような作法(儀軌)によって弟子に告げるべきである。

「それが誰であろうとも、これらの印契に通じていないものには、あなたはたとえひとつたりとも印契を示してはならない。なぜなら、未だ大曼荼羅を見ていない人々が印契を結んだとしても、霊験など起こる筈がないからである。そうすると彼らは必ず猜疑心に陥り、災いを招き、すぐにも死に至り、無間地獄に堕ちるだろう。またあなたは、その罪によって、死んだら最悪の世界に堕ちるだろう」

[大印の智慧]

{一切如来薩埵成就法における大印の智慧}

そこでまず、一切如来薩埵成就法における大印の智慧が、次のように教えられる。

「心を知ることから始めて、金剛不壊の光明(金剛日)の境地を達成しなさい。自らがブッダの姿になったと観想して、それを金剛界に転じ入れなさい」

この儀軌によってそれが達成されたなら、弟子はただちに智慧と長寿と若さを得て、さらにどこへでも行ける能力を得るだろう。また彼にとってブッダとなることも不可能ではない。これが一切如来の悟り(現等覚)の印契である。

[金剛薩埵成就法における大印の智慧]

次に金剛薩埵成就法において大印を結ぶ作法(儀軌)がある。

「自ら金剛薩埵のような誇りに満ちて、金剛杵を振り(抽擲)、金剛慢の印を示すならば、その精神(心)・言葉(語)・身体(身)に渡って、あなたは自ら金剛薩埵そのものとなるだろう。この遍行の印を結ぶならば、あなたはすべての愛欲の主となり、安楽を得るだろう。そしてあなたは神通力と長寿と力と容色において誰よりも勝れ、それらの点で金剛薩埵と等しくなるだろう」

「また永遠不滅に光り輝く心・言葉・身体をもってして、図のように順番に修習するならば、それらのめじるしや印契に対応した様々な金剛薩埵の偉大な効験(大薩埵)を達成することが出来るだろう。わたしは今、様々な道筋とそれを完成させる方法を説く。またそれを完成させる者たちの大いなる働きを順に説いて行く。初めは毎日、適正な時間にそれを習い修め、同時に作法(儀軌)に従い加持行に専念すれば、すべてを達成するだろう。それ以降は、望むように行じればよい」

{大印成就法広大儀軌}

次に大印を成就するための広大儀軌がある。

「入我我入の境地の中で、儀軌に従って大印を結んで、目の前に金剛薩埵を出現させなさい。それを智慧の金剛薩埵と見て、自らの体の中に取り込むようにしなさい。行者はその薩埵を鉤で引っ掛け、羂索で強引に引き入れ、縄で縛り上げ、鈴の音で癒しながら支配し、体の内に取り入れることが出来るだろう。次に、このような心真言(フリダヤ)がある」

ヴァジュラサットヴァ アーハ ※金剛薩埵よ、アーハ※

これは金剛入の心真言である。

ヴァジュラサットヴァ ドリシュヤ ※金剛薩埵よ、見よ※

これは金剛薩埵を常に記憶しておくための心真言である。

ジャハ フーム バン ヴァン ホーホ ※じゃく うん ばん こく※

これは金剛薩埵を鉤で引っ掛け、羂索で強引に引き入れ、縄で縛り上げ、鈴の音で癒し支配するためのの心真言である。

「サマヤス トヴァム(汝は三昧耶なり)という心真言を唱え、背後から月輪(発光エネルギー球体)に包み込まれる観想をしなさい。そして自らを三昧耶薩埵(印相)であると観想しなさい。サマヤス トヴァム アハム(汝は三昧耶なり、汝は我なり)と唱えながら・・。その三昧耶薩埵の印契を、自分自身であると観想しなさい。そうすれば、真言を唱えることによって、すべての印契を自分のものと出来るだろう。ジャハ フーム バン ホーホ(鉤・索・鎖・鈴)という心真言を念誦しながら、自らの体にすべてのブッダが入るように観想しなさい。心を喜ばせる遣り方によって達成されるのだから、この成就法は、他に比べようがないほど偉大である。ここでわたしは、以下のような諸尊の印契によって、その至高の金剛不壊の能力を説くだろう。それに従って、諸仏の力を引き出すことが出来たならば、その者はただちにブッダである状態に到達するだろう。

{四波羅蜜菩薩の大印}

金剛波羅蜜菩薩(薩埵金剛女)の印を自分のものに出来たならば、すべての印契女の主人となるだろう。

宝波羅蜜菩薩(宝金剛女)の印を自分のものに出来たならば、すべての財宝の持ち主になれるだろう。

法波羅蜜菩薩(法金剛女)の印を自分のものに出来たならば、ブッダの法を手にすることが出来るだろう。

業波羅蜜菩薩(業金剛女)の印を自分のものに出来たならば、金剛不壊の能力を持つものとなるだろう。

{十六大菩薩の大印}

金剛薩埵は、薩埵金剛印を結ぶことで自らと一体になれる。

金剛王菩薩(金剛鉤召)の印を結ぶことで、諸仏を己に引き寄せることが出来る。

金剛愛菩薩(金剛愛貪)の印によって、すべての諸仏を愛欲に浸らせることが出来る。

金剛喜菩薩(金剛善哉)の印によって、すべての諸仏を喜ばせることが出来る。

金剛宝菩薩の印によって、すべてに仏の灌頂を授けることが出来る。

金剛光菩薩(金剛威光)の印によって、すぐさまブッダの光に包まれることが出来る。

金剛幢菩薩の印によって、あらゆる願いを叶えることが出来る。

金剛笑菩薩の印によって、すべての諸仏と等しく笑うことが出来る。

金剛法菩薩の印によって、すべては清らかであるという法を自分のものに出来る。

金剛利菩薩の印によって、智慧の利剣を手にし、すべての諸仏の上に立てる。

金剛因菩薩の印によって、法輪を回し衆生済度をする能力が身につく。

金剛語菩薩の印によって、あらゆるブッダの言葉を使うことが出来る。

金剛業菩薩の印によって、すぐにも衆生済度の働きを手に出来る。

金剛護菩薩(金剛鎧)の印によって鎧を着れば、金剛不壊の身体となる。

金剛牙菩薩(金剛夜叉)の印によって、あらゆる魔を調伏出来る。

金剛印菩薩の印によって、あらゆる印契を自分のものに出来る。

{内の四供養の大印}

金剛嬉菩薩(金剛嬉戯女)の印によって、大いなる歓喜を手に入れられる。

金剛鬘菩薩(金剛鬘女)の印によって、すべての諸仏から灌頂を授けられる。

金剛歌菩薩(金剛歌女)の印によって、妖艶な金剛不壊の歌姫を手に出来る。

金剛舞菩薩(金剛舞女)の印によって、すべての諸仏に供養される。

{外の四供養の大印}

金剛香菩薩(金剛香女)の印によって、世間のものを悦ばせることが出来る。

金剛華菩薩(金剛華女)の印によって、世間を支配する魅力を手に出来る。

金剛燈菩薩(金剛燈女)の印によって、仏眼を開くことが出来る。

金剛塗菩薩(金剛塗女)の印によって、一切の苦を除くことが出来る。

{四摂の菩薩の大印}

金剛鉤菩薩の印によって、すべてのものを鉤で引っかけることが出来る。

金剛索菩薩の印によって、すべてのものを索で引き入れることが出来る。

金剛鎖菩薩の印によって、すべてのものを鎖で縛り上げることが出来る。

金剛鈴菩薩の印によって、すべてのものを鈴で悦ばせ、自分の支配下に置ける。

{一切如来の金剛三昧耶印の智慧}

次は一切如来の金剛三昧耶印の智慧である。両掌を固く合わせて指を伸ばし、交互に交差させるのが金剛合掌である。その指を完全に握り合わせると、それが金剛縛である。すべての観想における印(三昧耶印)は、この印母である金剛縛から始まる。わたしはそれら諸々の観想における印(三昧耶印)を結ぶ仕方を説くだろう。まず金剛縛を結ぶ。薩埵金剛印を固くして、両掌の中指を合わせて芽が出た時のように立てる。これが大日如来の印である。次に伸ばした両の中指を、今度は内側に縮めるようにすれば、それは阿閦如来の印となる。金剛縛の状態から、中指と大指(親指)を宝の形にすれば、それは宝生如来の印となる。両の中指を蓮華の莟のような形にすれば、それは観自在王如来(阿弥陀如来)の印となる。同様にして、その両指の頭を完全に内側に向ければ、それは不空成就如来の印となる。
 {如来族の三昧耶印}

次にわたしは、如来族の三昧耶印(観想するための印)の結び方と、その到達した意義と効用を説くだろう。金剛縛にした両手を月輪の形にして、中指を離し、小指の面を付けないのは、金剛薩埵の印を顕わす。両手の指先を鉤の形にすれば金剛王菩薩の印。その状態で両手の各指の先端を合わせれば金剛愛菩薩の印。そこから弾指(指を鳴らす)しながら喜びの表情をすれば金剛喜菩薩の印。以上が阿閦如来の眷族である金剛薩埵以外の三菩薩の印契における一連の所作である。両手の大指(親指)を並べ立てて、その両の大指(親指)の先を合わせて宝形にすれば、それは金剛宝菩薩の印になる。その金剛宝印の状態で中指と無名指(薬指)と小指を光を放つようによく伸ばせば、それは金剛光菩薩の印になる。その金剛光印の状態で、小指と無名指(薬指)の先を合わせて幢のような形にすれば、それは金剛幢菩薩の印になる。その金剛幢印を反転させて背中をつけた形が、金剛笑菩薩の印になる。金剛縛から両の頭指(人差し指)を合わせて内に曲げるなら、それは金剛法菩薩の印になる。金剛縛から両の中指を伸ばして指先を剣先のようにすれば、それは金剛利菩薩の印になる。金剛利印の状態から両の無名指(薬指)と小指とを合わせて輪形にすれば、それは金剛印菩薩の印となる。金剛縛から両の大指(親指)を開いて口元に当てれば、それは金剛語菩薩の印になる。金剛縛を伏せて開き、小指と親指の面を合わせて内に曲げるなら、それは金剛業菩薩の印になる。この金剛業印の状態で両の頭指(中指)を伸ばし先端を尖らせ、そのまま胸に当てれば、それは金剛護菩薩の印になる。金剛縛から両の頭指(人差し指)を伸ばして先を曲げ、両の小指を牙のように開けば、それは金剛牙菩薩の印になる。金剛縛から両の小指を手の中に入れ、両の頭指(人差し指)を曲げて大指(親指)を押し付ければ、それは金剛拳菩薩の印になる。金剛縛から大指(親指)を合わせて胸につければ、それが金剛嬉菩薩の印になり、その印のまま両肘をまっすぐに伸ばせば、それが金鬘菩薩の印になる。金剛縛を解いて、指先で口元を散じれば、それが金剛歌菩薩の印になり、その両手を舞を舞うように頭上で合わせれば、それが金剛舞菩薩の印になる。金剛縛を下に向けて散じるなら、それは金剛香菩薩の印になり、合掌して上に散じれば、それは金剛華菩薩の印になる。金剛縛で大指(親指)を並べて押し付ければ、それが金剛燈菩薩の印になり、その印を解いて指をよく伸ばすなら、それが金剛塗菩薩の印になる。金剛縛から右の頭指(人差し指)を立てて、招くように動かせば、それが金剛鉤菩薩の印になり、金剛縛から両の大指(親指)を結び目のように絡ませれば、それが金剛索菩薩の印になる。金剛縛から大指(親指)と頭指(人差し指)を腕輪のように結べば、それは金剛鎖菩薩の印になり、金剛拳にした両手の頭指(人差し指)を合わせ立てれば、それは金剛鈴菩薩の印になる。

[成就法]

次にわたしは、これら諸尊の三昧耶(観想するための)印を完成させる最上の金剛成就法を、自らの心臓にいる大印と共に金剛薩埵の瞑想に入り、それによって説くだろう。ついでわたしは、これら三昧耶印の遣り方である、無上なる金剛業(効用)を説くだろう。それによってすぐさま、曼荼羅阿闍梨とその弟子たちに霊エネルギーを注入するだろう。

曼荼羅阿闍梨が薩埵金剛印を結ぶならば、そこにおいて持金剛(金剛薩埵)に等しいものとなるだろう。

金剛鉤召印(金剛王菩薩の印)を結べば、それだけで彼は一切諸仏を招集することが出来るだろう。

欲金剛印(金剛愛菩薩の印)を結べば、彼は悟った者(正覚者)すら愛欲に浸らせることが出来るだろう。

金剛歓喜印(金剛喜菩薩の印)を結べば、彼はすべての煩悩を克服した者(勝者)から「素晴らしい」と称讃されるだろう。

宝金剛の印(金剛宝菩薩の印)を結べば、彼は諸仏によって智水を頭に濯がれる(灌頂)だろう。

金剛日の印(金剛光菩薩の印)を結べば、彼はブッダに等しいエネルギー球体(円光)を有するものとなるだろう。

金剛幢の印(金剛幢菩薩の印)を結べば、彼はすべての願いを叶えることが出来るだろう。

金剛笑の印(金剛笑菩薩の印)を結べば、彼はすべての諸仏とともに笑うことが出来るだろう。

金剛法の印(金剛法菩薩の印)を結べば、彼は堅固不滅に光り輝く法の菩薩となることが出来るだろう。

金剛剣の印(金剛利菩薩の印)を結べば、彼はすべての煩悩を断ち切ることが出来るだろう。

金剛輪の印(金剛因菩薩の印)を結べば、彼は曼荼羅の主催者となるだろう。

金剛語の印(金剛語菩薩の印)を結べば、彼はすべてに輝き渡る堅固不滅の言葉を獲得することが出来るだろう。

羯磨金剛の印(金剛業菩薩の印)を結べば、彼はあらゆる事象に働きかける堅固不滅の力を得ることが出来るだろう。

金剛鎧の印(金剛護菩薩の印)を結べば、彼の身体は堅固不滅となるだろう。

金剛牙最勝印(金剛牙菩薩の印)を結べば、彼はあらゆる悪しき魔を粉砕するだろう。

金剛拳の印(金剛拳菩薩の印)を結べば、彼はすべての印契を支配することが出来るだろう。

金剛嬉女の印(金剛嬉菩薩の印)によって、あらゆる喜悦を手にし、金剛鬘女の印(金剛鬘菩薩の印)によって、あらゆる豪華さ(荘厳)を得られ、金剛歌女の印(金剛歌菩薩の印)によって、その言葉は常に明瞭になり、金剛舞女の印(金剛舞菩薩の印)によって、あらゆる供養を得られる。

金剛香女の印(金剛香菩薩の印)によって、世間を喜ばせることが出来るだろうし、金剛華女の印(金剛華菩薩の印)によって、美しく飾り立てる容姿となることが出来るだろうし、金剛燈女の印(金剛燈菩薩の印)によって、世間は清らかになるだろうし、金剛塗女の印(金剛塗菩薩の印)によって、天妙の香を放つことが出来るだろう。

金剛鉤の印(金剛鉤菩薩の印)は、あらゆるものを引き寄せ、金剛索の印(金剛索菩薩の印)はあらゆるものを引き入れ、金剛鎖の印(金剛鎖菩薩の印)は、あらゆるものを縛り上げ、金剛鈴の印(金剛鈴菩薩の印)は、あらゆるものを癒して支配するだろう。

[法印]

次に、上記の印に対応する真言が説かれる。

「ヴァジュラジュニャーナ(金剛智よ)という真言は、諸仏の金剛界を堅固にする。わたしはさらに法規(儀軌)に従って諸尊の真言(法印)を説く。

サマヤス トヴァム(我は三昧耶なり)という真言を発音するなら、その人はすべての印契女の主となるだろう(金剛薩埵)。

アーナヤスヴァ(汝は導け)という真言を発音するならば、その人は諸仏を鉤で招き入れるだろう(金剛王菩薩)。

アホー スッカ(ああ、楽よ)という真言を発音するならば、その人は諸仏すらも愛欲の虜にするだろう(金剛愛菩薩)。

サードゥ サードゥ(善哉、善哉)という真言を発音するならば、その人は諸仏を「素晴らしい」と喜ばせることが出来るだろう。

スマハット トヴァム(汝は極めて大いなるものなり)という真言を発音するならば、その人はすべての諸仏によって智水を頭に濯がれる(金剛宝菩薩)。

ルーボードヨータ(容色の輝きあるものよ)という真言を発音するならば、その人は法の威光に照らされるだろう(金剛光菩薩)。

アルタプラープティル(利益の獲得があるもの)という真言を発音するならば、その人はすべての願いを叶えることが出来るだろう(金剛幢菩薩)。

ハ ハ フーム ハ(ははははは)という真言を発音するならば、その人はすべての諸仏といっしょに笑うだろう(金剛笑菩薩)。

サルヴァカリ(一切作者よ)という真言を発音するならば、その人はすべての諸仏によってあらゆる罪業を清められるだろう(金剛法菩薩)。

ドゥッカチェーダ(よく苦を断ずるものよ)という真言を発音するならば、その人はすべての苦しみを切断することが出来るだろう(金剛利菩薩)。

ブッボーディル(ブッダの菩提は)という真言を発音するならば、その人は曼荼羅の主催者となることが出来るだろう(金剛因菩薩)。

プラティシャブダ(こだまよ)という真言を発音するならば、その人は諸仏とともに論談することが出来るだろう(金剛語菩薩)。

スヴァシトヴァム(汝は完全なる支配者)という真言を発音するならば、その人はすべてのものに対して支配力を行使出来るだろう(金剛業菩薩)。

ニルブハッヤス トヴァム(汝は畏れなきものなり)という真言を発音するならば、その人はその瞬間に畏れなきものなりになるだろう(金剛護菩薩)。

シャトルム ブハクシャ(怨敵を啖え)という真言を発音するならば、その人はすべての怨敵を啖うだろう(金剛牙菩薩)。

サルヴァシッディル(一切の悉地が)という真言を発音するならば、その人はすべての効験を顕わすことが出来るだろう(金剛印菩薩)。

マハーラティ(大いなる歓喜)という真言を発音するならば、その人は天妙の歓喜をもたらし(金剛嬉菩薩)、ルーパショーブヘー(色っぽく美しい女よ)という真言を発音するならば、その人は同様の歓喜をもたらすだろう(金剛鬘菩薩)。

シュロートラサウクフヤー(耳にとって悦ばしき女は)という真言を発音するならば、その人は楽をもたらすであろうし(金剛歌菩薩)、サルバプージャー(一切供養女は)という真言を発音するならば、その人はとても供養されるだろう(金剛舞菩薩)。

プラフラーディ二(悦ばしめる女よ)という真言を発音するならば、その人は心を悦ばしめ(金剛香菩薩)、プハラアーガミ(果報をもたらす女よ)という真言を発音するならば、その人は果報を得られるだろう(金剛華菩薩)。

ステージャアグリ(最上威光の女よ)という真言を発音するならば、その人は偉大なる威光を輝かせ(金剛燈菩薩)、スガンダアンギ(よき香ある女よ)という真言を発音するならば、その人は香あるものとなるだろう(金剛塗菩薩)。

アーヤーヒ ジャーハ(きたれジャク)という真言を発音するならば、その人は鉤召するものとなり(金剛鉤菩薩)、アーヒ フーム フーム(アーヒ ウン ウン)という真言を発音するならば、その人は引入するものとなるだろう(金剛索菩薩)。

へー スポータ バン(へー 鎖よ バン)という真言を発音するならば、その人は大いなる鎖となり(金剛鎖菩薩)、ガンター アハ アハ(鈴は アク アク)という真言を発音するならば、その人はよく鈴の音を鳴らすものとなるだろう(金剛鈴菩薩)。

[法印の成就法]

{羯磨印}

次に羯磨印を結ぶことによって相手を縛る所作(儀軌)がある。

「金剛拳を固く握って、それによって引き込もうとするならば、両手を使いなさい。それを両手の金剛印にして、縛りなさい。まず左の人差し指(金剛指)が立てられ、その指を右手の金剛拳が握る。覚勝印(智拳印のこと)と名付けられたその印は、ブッダの悟りを顕わす(大日如来)。阿閦如来の印は触地印であり、宝生如来の印は施願印である。無量寿如来の印は定印であり、不空成就如来の印は施無畏印である。次にわたしは、羯磨印を略した形で説く。金剛薩埵以下の諸尊に金剛不壊の働きをもたらす(金剛業)、その羯磨印を。左手で金剛慢の印を結び、右手で金剛杵を振って勢いを示すのが金剛薩埵の羯磨印。右手に鉤を握るのが金剛王菩薩の羯磨印。両手で箭を握る姿勢を示すのが金剛愛菩薩の羯磨印。「素晴らしい」という印を心で顕わすのが金剛喜菩薩の羯磨印。両手を金剛拳にするのが灌頂の印であり、それは金剛宝菩薩の羯磨印。心に光明を顕わすのが金剛光菩薩の羯磨印。左手の金剛拳の上に右肘を立てるのが金剛幢菩薩の羯磨印。両手の金剛拳を口元に遣るのが金剛笑菩薩の羯磨印。左手に水(瓶)を持ち、右手で輝かせるのは金剛法菩薩の羯磨印。左手は心臓のところに置き、右手は剣を持つのが金剛利菩薩の羯磨印。炬(かがり火)を回して輪のようにするのは金剛因菩薩の羯磨印。両手の金剛拳を口元で前に開くのは金剛語菩薩の羯磨印。両手の金剛拳を舞うように回して、頬のところで解いて頭上に置くのは金剛業菩薩の羯磨印。甲冑の印は金剛護菩薩の羯磨印。両手の金剛拳の小指を曲げて牙のようにするのが金剛牙菩薩の羯磨印。両手の金剛拳を胸の前で押すのが金剛拳菩薩の羯磨印。金剛慢の印を結んで心を慄かせつつ礼拝するのが金剛嬉菩薩の羯磨印。華鬘を両手に繋げるのが金剛鬘菩薩の羯磨印。両手の金剛拳を口のところで開くのが金剛歌菩薩の羯磨印。両手を舞踏のように旋回するのが金剛舞菩薩の羯磨印。金剛拳を基礎にして、香華燈塗の各供養女(外の四供養菩薩)の羯磨印を結びなさい。すべての如来を供養するために、供養女の印が規定されるのだから。両手の金剛拳から、頭指(人差し指)同しを絡めて、小指を鉤のように立てれば、金剛鉤菩薩の羯磨印。左の肘を腰に当て、右の手に羂索を持てば、金剛索菩薩の羯磨印。両手の頭指(人差し指)を鉤のように引っ掛け合うと、金剛鎖菩薩の羯磨印。金剛拳にした状態で、背中合わせにすれば、金剛鈴菩薩の羯磨印である。

[羯磨印の成就法]

そこでわたしはそれら諸尊の印の成就法をとく。それらを結ぶことの功徳は、それら諸尊の堅固不滅に光り輝くダイヤモンドのような働き(金剛業)が、実際に可能になったことに等しいものである。まず、ダイヤモンドのように堅固不滅に光り輝くすべてものからなる金剛杵を、心臓の上に観想しなさい。次に述べるのは、羯磨印を結ぶことによる様々な働きであるが、それは諸尊に応じて多様にある。

智拳印を結ぶなら、行者は仏智を証すことができる(大日如来)。

阿閦の印を結べば、心は不動のものになるだろう(阿閦如来)。

宝生の印を結べば、他者を引き入れることが出来るだろう(宝生如来)。

正法輪印を結べば、法の輪を回すことが出来るだろう(阿弥陀如来)。

施無畏因を結べば、速やかに生きとし生けるものの畏れを除くことが出来るだろう(不空成就如来)。

金剛慢印を固く結ぶことで、金剛薩埵の安楽の境地を得るだろう(金剛薩埵)。

金剛鉤印を結ぶことで、すぐにもすべての如来を招集出来るだろう(金剛王菩薩)。

金剛箭印を結ぶことで、金剛貴妃すらも自分を愛するようになるだろう(金剛愛菩薩)。

金剛喜印を結ぶことで、すべての勝れたる者から「素晴らしい」と賛嘆されるだろう(金剛喜菩薩)。

大金剛摩尼印を結ぶことで、行者は諸師から灌頂されるだろう(金剛宝菩薩)。

金剛日の印を結ぶことで、彼は太陽にように光り輝くだろう(金剛光菩薩)。

金剛幢印を結ぶことで、彼は宝の雨を降らせることが出来るだろう(金剛幢菩薩)。

金剛微笑印を結ぶことで、彼はいつでも諸仏と共に笑うことが出来るだろう(金剛笑菩薩)。

金剛開華印を結ぶことで、彼は金剛不壊の法を会得するだろう(金剛法菩薩)。

金剛剣印を結ぶことで、すべての苦を断ち切ることが出来るだろう(金剛利菩薩)。

金剛輪印を結ぶことで、法の輪を回すことが出来るだろう(金剛因菩薩)。

金剛語印を結ぶことで、すべてのブッダの言葉を自分のものに出来るだろう(金剛語菩薩)。

金剛舞供養最上印を結ぶことで、諸仏すらも支配出来るだろう(金剛業菩薩)。

金剛甲印を結ぶことで、その身を金剛のように堅固に出来るだろう(金剛護菩薩)。

金剛牙印を結ぶことで、堅固なものも降参させることが出来るだろう(金剛牙菩薩)。

金剛拳によってすべてを奪い、また堅固不滅の効験を得ることが出来るだろう(金剛拳菩薩)。

金剛嬉印は歓喜をもたらすだろう(金剛嬉菩薩)。

金剛鬘印は色気をもたらすだろう金剛鬘菩薩)。

金剛歌印は歌唱力をもたらすだろう(金剛歌菩薩)。

金剛舞印は舞踏の能力をもたらすだろう金剛舞菩薩)。

焼香印は喜びをもたらし(金剛香菩薩)、華印は美しさをもたらし(金剛華菩薩)、燈印は光をもたらし(金剛燈菩薩)、塗印は自らを良い匂いにする(金剛塗菩薩)。

金剛鉤印を結ぶことで、あらゆるものを鉤で引き寄せられ(金剛鉤菩薩)、金剛索印を結ぶことで、あらゆるものを羂索で引き入れ(金剛索菩薩)、金剛鎖印を結ぶことで、あらゆるものを縛り上げ(金剛鎖菩薩)、金剛鈴印を結ぶことで、あらゆるものを感動される(金剛鈴菩薩)ことが出来るだろう。

[諸儀則]

{一切の印に共通する結縛の儀則}

次にすべての印に共通する結縛の広大な儀軌(マニュアル)がある。その場合は、まず最初に金剛縛にした両手の指を心臓のところで鳴らして、次のような心真言を発音しなさい。

ヴァジュラバンダ トラット ※金剛よ トラット※

ついで、すべての印契の縛がある。それをするなら、堅固不滅に光り輝く自らの身体と言葉と心を支配することが出来る。

ついで、金剛入の印を結んで、次のような心真言を発音しなさい。

アハ ※アク※

このように唱えれば、すべてにわたる諸尊は親友のように行者に寄り添うだろう。次に印契として表現される大薩埵(金剛薩埵)を思い浮かべながら、次のような心真言を唱えなさい。

マハーサマヤサトヴォー フーム ※大三昧耶薩埵なり フーム※

この心真言によって、すべての印契は達成される。以上が、すべての印契を得るための広大な儀軌(マニュアル)である。

{共通の成就法の儀則}

次に、共通の成就法の広大な儀軌(マニュアル)である。まず自分が結ぼうとしている印契を結縛して、次のような心真言を唱えながら、その印契に表現される薩埵が、自分自身に他ならない、と観想しなさい。

サマヨー ハム ※我は三昧耶なり※

次に、自分が結んだ印契に表現される薩埵が自分自身であると確信してから、次のような心真言によって霊エネルギーを注入(加持)しなさい。

サマヤサットヴァ アディティシュタスヴァ マーム※三昧耶薩埵よ、我を加持せよ※

このようにすれば、効験(悉地)を得ることが出来るだろう。

{悉地広大儀軌}

次は効験の到達(悉地)に至る大いなる儀軌(マニュアル)である。まず、諸尊の恩恵(利益)を受けようと願うならば、「アルタシッディ(利益の達成)」という心真言を唱えることによって、その修法(儀軌)を完成させなさい。このようにすれば、悉地の印契としての大印は、大いなる恵み(利益)を生むことになるだろう。また、堅固不滅な(金剛)悟りの完成(悉地)を得ようと願うなら、この「ヴァジュラシッディ(金剛悉地)」という心真言を唱えることによって、その修法(儀軌)を完成させなさい。このようにすれば、思うがままに堅固な悟りの効験を現わすことが出来るだろう。また、真言霊能者(持明者)の効験を得ようと願うならば、この「ヴァジュラヴィドヤーダラ(金剛持明者よ)」という心真言を唱えることによって、その修法を完成させなさい。このようにすれば、思うがままに真言の能力を発揮することが出来るだろう。また、この上ない境地を達成(悉地)したいと願うならば、自分が結んでいる印契の心真言を唱えることによって達成しなさい。以上が四種悉地の大いなる儀軌(マニュアル)である。

 {大乗現証百字真言}

次は、すべての印に共通する、自らの身・語・意をダイヤモンドのように堅固不滅に光り輝くようにする広大なる儀軌(マニュアル)を説く。もし印契のエネルギーが弱くなったように感じたり、あるいは嫌になって止めたくなったりしたら、次のような心真言を唱えることで、自らの身・語・意を堅固にすることが出来る。

オーム ヴァジュラサットヴァ サマヤム アスパーラヤ ヴァジュラサトバトヴェーナウパティシュタ ドリドー メー ブハヴァ ストーシュヨー メー ブハヴァ アスラクトー メー ブハヴァ スポーシュヨー サルヴァシッディム チャ メープラヤッチャ サルバカルマス チャ メー チッタシュレーヤハ クル フーム ハ ハ ハ ホー ブハガヴァン サルヴァタターガタヴァジュラ マー メー ムンチャヴァジュリー ブハヴァ マハーサルヴァサトヴァ アーハ※金剛薩埵よ。我をして三昧耶を護らしめよ。金剛薩埵として我が傍らにとどまれ。我にとって堅固であれ。我にとって喜ばしきものであれ。我にとって我に染められたものであれ。我にとってよく我を盛り立てるものであれ。そして、すべての効験(悉地)を我に与えよ。そしてすべての働き(業)において、我に心の幸福をもたらせ。フーム ハ ハ ハ ホー世尊よ。一切如来金剛よ。我を棄てることなかれ。金剛堅固であれ。大三昧耶薩埵よ。アーハ※

この真言を唱えれば、例え無間地獄に堕ちるような悪事を働こうと、すべての如来をあざむこうとも、正法を破壊するものであっても、このような悪業をなすものであっても、すべての如来の印契を成就することが出来るから、それによってその身・語・意は金剛薩埵のように堅固になり、まさに彼の一生の中で望むがままのすべての効験(悉地)、最上の効験(悉地)、堅固不滅に光り輝くダイヤモンドのような効験(悉地)、あるいは金剛薩埵の効験(悉地)を獲得するだろう、とは、すべての如来の集合エネルギーである世尊・金剛薩埵が仰せられたことである。

{解印・供養(四智梵語)・發遣の儀則}

次に、すべての印契を解く広大な儀軌(マニュアル)がある。まず最初に、おのおのの印契の効力を、次のような共通の心真言によって解きなさい。

ヴァジュラ ムフ ※金剛よ、ムフ※

ついで心臓より現れた金剛宝の印を、自らの灌頂所に安置して、智水を灌ぐ儀式(灌頂)を行い、両手の頭指(人差し指)で華鬘の印によって、その金剛宝の印に華鬘を懸ける動作をしながら、次のような心真言を唱えつつ、甲冑の印を結びなさい。

オーム ラトナヴァジュラ アビシンチャ サルヴァムドラーム メー ドリディークル カヴァチェーナ バム※オーム 金剛宝よ。すべての印契を我に灌頂せよ。甲冑によって我を堅固にせよ※

ついで被甲の印を解いて、華鬘の印も解いてから、改めて合掌し、次のような心真言によって喜ばせなさい。

ヴァジュラトゥシュヤ ホーホ ※金剛歓喜よ ホーホ※

この所作によって、印を解くにも、また結ぶ時にも、印契を喜ばせることが出来る。それによって行者の身・語・意は金剛のように堅固になり、さらには金剛薩埵の状態と同じになる。一度でもこの心真言を唱えたなら、金剛薩埵と等しいものになり、そして彼は望むがままに、安楽の境地を達成する。それは金剛手(金剛薩埵)の言葉である。金剛薩埵を始めとするすべての霊験達成法(成就法)の作法(業)において、いつでもこの心呪を唱えるならば、すべての修法マニュアル(カルパ)を完成(悉地)することが出来る。そしてそれらが、心呪や印契や真言や明(ダラーニなど)のうち、心に適った道理(理趣)に従って行うなら、マニュアル(カルパ)の中で説なえられているものであるにせよ、あるいは自分の発想で自由にするにせよ、どんな場合でも必ず達成(悉地)する。次に供養のための秘密の印契を結びつつ、四種秘密供養を行うべきである。すなわち、次のような金剛讃歌(四智梵語のこと)を歌いながら・・。

オーム ヴァジュラサットヴァサングラハード ヴァジュララトナム アヌッタラムヴァジュラダルマガーナイシュ チャ ヴァジュラカルマかロー ブハヴァ※オーム 金剛薩埵を受け入れることによって、この上なき金剛の宝を我に与えよ。そして諸々の金剛法の詠歌によって、汝は金剛の働きを成すものであれ※

次に、内の曼荼羅(観想によって描き出す曼荼羅)においてもまた、この金剛讃歌を歌い、金剛舞を舞い、両掌を合わせて器の形にして、普供養の印を結び、焼香などによって供養しなさい。それから、外の曼荼羅(実際に曼荼羅を描くこと)において、焼香などの様々な供養をして、各自の本来の位置に着きなさい。そうしたら、各自、でき得る限りの全力を尽くして供養しなさい。すべての如来へ向けて啓白(ブッダを尊敬する文書)を読み、焼香などによって自分が良いと思えるまで供養し、そうして如来たちが道場に入ってきたなら、自分の出来る範囲で美味しい食べ物や楽しみ、あるいは大曼荼羅を描くにあたっての宝具などによって満足さなさい。そうしたなら、金剛薩埵に等しい阿闍梨は、その人にすべての如来の霊験の完成(悉地)をもたらす誓いの言葉(誓戒)を与えるだろう。
「これはすべてブッダの身体である。それは今、我、金剛薩埵の手にあり。汝は常に、この金剛手(金剛薩埵)の誓いの言葉(誓戒)を忘れずに心に持っているべし。

オーム サルヴァタタギャタシッディーヴァジュラサマヤ チシュタ エイシャ トヴァーム ダーラヤーミ ヴァジュラサトヴァ ヒ ヒ ヒ ヒ フーム※一切如来の霊験を達成する堅固不滅の悟りの境地(サマヤ)よ。確立せよ。我はまさに汝を持せん。金剛薩埵よ。ヒ ヒ ヒ ヒ フーム※」

それから阿闍梨は、その壇に臨んだすべてのものに、これは誰にも語ってはならない、という誓いの心呪を説くだろう。

次に阿闍梨は、この壇場に入って来たすべての如来たちを撥遣(魂を抜く作法)をして、次のようなブッダを尊敬する文書(啓白)を読みなさい。そして金剛薩埵を結んで、上に向けてそれを解き、次のような心呪を唱えなさい。

オーム クリトー ヴァハ サルバサトヴァアルタハ シッディル ダッター ヤターアヌガー ガッチャドヴァム ブッダヴィシャヤム プナルアーガマナーヤ トゥ ヴァジュラサトヴァ ムフ※オーム あなた方によってすべての功徳が成されたり。望むところの霊験(悉地)が与えられたり。ブッダの世界に一旦は帰りたまえ。再び来て頂くために。金剛薩埵よ ムフ※

すべての曼荼羅作法において、このようにすべきである。様々な悟りの境地に至る最勝の作法においても、儀軌(マニュアル)には同じように説かれている。

金剛頂一切如来真実摂大乗現証大教王経

金剛界大曼荼羅広大儀軌品

 [完]

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